IoTは通信できなければデータが取得できなくなります、通信ができなくなる事態は悪夢としか言いようがありません。2022年7月に発生したauの通信障害は約2.5日間携帯電話が利用できず困った事態となりました。じゃあ、別のキャリアに乗り換えればと言う訳にはいきません。2021年10月にはdocomoでも約1日間同様に携帯が利用できない事象が発生しています。このような大規模でなくても1つの基地局が故障して繋がりにくくなることは日常的に日本のどこかで発生しています。
昨今叫ばれているBCP(Business Continuity Planning: 事業継続計画)対策を考えてみます。
BCPは何でもない日常では無駄なコストにしか見えませんが地震、風水害、コロナの感染症、設備事故、火災と幅広い緊急事態にどう対処するか日頃から決めておくことで復旧時間を短くし事業を元の状態まで復旧する事が大切で最悪の廃業にいたる事態を回避します。廃業した例として「東京羊羹本舗」がありました、有名でおいしい羊羹は2013年に機械設備・建物が老朽化し部品も直すことができず廃業に至りました。機械が壊れなければもしかしたらまだ営業を続けていたかもしれません。これもコストバランスを熟慮した結果でしょう。私たちの事業もBCPを考慮しておく必要があります。
ではIoTの場合はどうでしょうか、IoTは広い意味でのICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)の一部になります。通信回線を使った技術なので通信回線に問題があれば業務に支障が出ます、まさにBCPの緊急事態発生です。
単純化して考えてみましょう、auとdocomoの稼働率が仮に。2年に一度24時間程度故障していると仮定すると99.8%程度になります。この2つを利用して同時に壊れないとすれば1-(1-0.998)×(1-0.998) = 0.99999 = 99.999%の稼働率になりほぼ100%稼働する事になります。このように回線の二重化のコストを無視すれば業務は停止しないことになります。しかし現実にはコストは無視できません。コストをそこまでかけず、システム全体がダウンさせないようにとキャリアを半々にして稼働させることも経営判断としてはあるかと思います。
なにも通信障害だけではなく自社製品の故障もあり得ます、故障率も稼働開始時期と経年変化の出る時期で異なります。機械は初期故障と経年劣化による摩耗故障がありこの故障率を表したグラフが最初と最後が上がっているのでバスタブ曲線と呼ばれます。いかに初期不良を減らすか、経年変化で故障する前に新しい装置に交換するかの予測も大切になります。
キャリア選択でauとdocomoの回線をそれぞれ契約するにしても注意が必要なのはMVNO(Mobile Virtual Network Operator:仮想移動体通信事業者)の回線はauやDocomoの回線を再販したサービスがあるので同じ系列では同時に障害が発生する可能性が高いので別の回線かどうか確認する必要があります。auであれば同社の回線を使っているUQ mobileやpovoは除外しますし、Docomoの場合もahamoを除外してMVNOの回線は、IIJmio、mineo、BIGLOBEモバイル、イオンモバイル、muroモバイルなどんから主線とは別のキャリアを選択できます。
とは言っても自分の使う携帯が繋がらないのは非常事態です。対策として万全なのは複数のキャリアで携帯を契約する方法です。今のスマホはデュアルSIM対応の物も販売されておりiPhone、Google Pixel、AQUOSなどで利用できます。格安SIMで備えるのも良いでしょう。格安SIMでも単なる文鎮となった携帯電話でもつながればSNSを使って連絡は取ます。
準備を完了する前に障害に遭遇したら公衆無線LANサービスを臨時で利用するのも手です鉄道やカフェで無料WiFiが使えます。コンビニも以前は利用できましたがローソンは使えますがセブンイレブンやファミリーマートはサービスを終了していました。本来訪日外国人向けに提供されているサービスではありますが、Japan Connected-free Wi-FiはNTTグループがアプリを提供しているもので比較的安全でしょう。
安全安心は必要とは言え必要以上に掛けることも経営陣としてはコストバランスを見極める必要があります。発生が予測される緊急事態が及ぼす事業への影響と復旧に関するコストにどの程度かけれるのか考えてみてください。