コロナ禍が収まらない中、時々話題となるのがFAX(もとはゼロックス社の登録商標で本来はファクシミリ: facsimile)、インターネットがこれほど普及しているのに手書きの物を送ってパソコンに手入力しているから大変ってそりゃ大変でしょう。さすがに家庭ではFAXはお役御免となりましたが、今でも注文はFAXしてくださいという企業は数多くあります。どうしてFAXが必要な場合はコンビニから送ることもできますし、業務で使うならFAX代行もありますが、
このFAXを廃止した企業があります。東日本全域に社員48,000人を有する企業が2013年からICT化をしました。さすがに明日から切り替えますとはならず着手から2年近くかかっての移行です。
FAXを何に使っているかと言えば主に管理者は担当者が居る場所にFAXで情報を伝えます、現場の責任者は担当者に手渡しします。配信箇所が多くなると管理者間でFAXして広範囲に送るなど非常に煩雑であり、しかもFAXを使う時は主に緊急時であるなど確認などの手間が急増します。
この問題を解決するためにまずFAXを廃止するにはどうしたらいいのか、代替手段はどのようにするのかと基本的な所から始まりました。今まで業務データをインターネットに接続したことがありません。しかも通信手段は専用線の世界です。FAXもこの専用線を使っていました。当然ながらセキュリティが安全性がと何かにつけて反対意見が多数出てきます。それだけではありません、FAXしていたデータには本社の大型コンピュータから出力されたものも含まれているので大型コンピュータをインターネットに接続する事もありえないというものです。
当時は携帯電話がいわゆるスマホに移行時期で従業員が業務中に携帯電話を使ってゲームしていたんじゃないかとかお客様からクレーム入ったりしていたため携帯電話を業務中に使う事もはばかれるありさまでた。そんななか、iPadが2011年に発売された事が転機となり従業員にはこのタブレットを持たせることが決まりました。また、タブレットになったことで画面が広いので業務マニュアルもPDF化して収納しましたし、構内図面などのCADデータもPDF化して収納する事ができて、今まで2kg以上あった紙の書類が廃止できました。
しかも2012年にはiPad miniが発売され341gと軽量でサイズ的にもFAXで送っていた情報も表示するには好都合でした。
大型コンピュータをインターネットに接続するにはセキュリティ強化と言ってもまだ安全性に問題が無いと言い切れないのでFAXのかわりにスキャナを設置してスキャナから各端末へ自動配信できる仕組みを用意しました。これだけでもFAXよりは格段に手間が省かれます。さて、現場で導入試験となると今度はiPadの管理方法が問題になってきます。勤務はいわゆるシフト勤務なので人に端末を紐づけすると誰が今日の担当、病欠で代理がなど余計に複雑な管理になります。さらに担当者からはiPad miniをどこに置くのか、充電を一か所に集めたら電気的な容量は足りるのか、充電が切れや故障しりしたらどうするのか、心配事は尽きません。iPad miniを収納して充電できるラックの導入や電機部門への確認や必要に応じて工事するなど地道な作業を重ねていきます。100台ほどの先行導入試験を行いさらにフィードバック、業務開始時の手差し確認もiPad miniを使って行うなど業務手順も少し手を加えていきます。そして、2013年には7,000台導入を開始しました。今ではさらに広範囲の活用が進んでいます。意外だったのが苦肉の策で導入したスキャナですが、業務連絡で印刷物に手書きして簡単に配信できるので評判が良いとの事です。iPad用に開発された業務アプリも増えて今では欠かせないものになっています。今思えばこれをきっかけに当時は絶対にNGと言われた位置情報も今ではネットに配信されていますし。仕事の仕方を変えることは経営側からの後押しが必要と感じた案件でもあります。